テレビの見過ぎにご注意を。 / by Noriko Ikedastemo

今回は歯と口からちょっと離れてみたいと思います。最近発表された報告2つから、座る時間が長いことは危険です、という話。そして、週末に寝不足の借金を払うように、長く座った時間をなかったことにできるかもしれないという話です。

Shirakawaらは、テレビを長時間見ることは、肺塞栓症による死亡のリスクが増えるという結果を発表しました(参考文献1)。肺塞栓症とは、エコノミー症候群と同じもので、長時間同じ体勢でいると足の血管の中に血栓ができ、それが飛んで行って肺の血管がつまるというものです。詳しくはこちらをどうぞ。

研究では1988年から1990年の間に、全国45地域で40歳から79歳の11085人にアンケート調査を行いました。このうちテレビを見る時間を書かなかった人、がん・心筋梗塞・脳梗塞・肺梗塞の既往のある人を除いた86024人に対し、その後約20年間追跡調査を行いました。2009年までに59人が肺塞栓症により死亡しました。

テレビを見る時間と肺塞栓による死亡との関連を調べた結果がこちらです。

テレビを見る時間が1日に2.5時間未満の人と比べると、

2.5〜4.9時間の人では肺塞栓症で死亡するリスクが1.7倍、

5時間以上では肺塞栓症で死亡するリスクが2.5倍

 

になることがわかりました。そして、

テレビを見る時間が2時間増えると、肺塞栓症で死亡するリスクが40%増加する

こともわかりました。

筆者らは、今後スマートフォンやパソコンを座ってする時間が長い人と肺塞栓書の調査も必要、と述べています。

 

この報告以外にも、座る時間が長いと肺塞栓だけでなく他の病気になり死亡率が上がる、という報告がたくさん出ているので、巷では立って仕事ができるスタンディングデスクが売られています。昨年アメリカのとある大学病院を見学した時も、放射線科の読影室(レントゲンを読んで診断する部屋)や、研究室ではスタンディングデスクを使っておられました。疲れたら高さを変えて座れるというやつです。帰国後は私もかぶれて立って仕事しようとしましたが、すぐ元に戻っちゃいました。そこに山があったら登る人がいるように、そこに高さの変わらない低い机と椅子があったら座ってしまうという習性はなおりませんでした。

 

しかし朗報です。文献1では年齢、性別、高血圧、糖尿病、喫煙、ウォーキングやスポーツの時間なども検討した上で上記結果を出しているのですが、別の文献2では、「日々の適度な身体活動は、長時間座ることによる死亡リスクを抑制する(参考文献2)」いう報告がされています。

Ulf Ekelundらは、座る時間が長いということと、運動、様々な原因による死亡率(心臓血管疾患、乳がん・大腸がん・直腸癌など)との関連を見た研究報告を検索しました。その結果ヒットした16試験、合計100万人以上のデータ全てをもう一度まとめなおして、分析を行ったとのことです。その結果がこちら。

毎日の適度な身体活動を1日60分から75分している人は、最も座る時間が長いグループ(1日8時間以上座る)でも死亡リスクの上昇を認めませんでした。

つまり長く座ったために起こるはずの死亡リスクは帳消しになったということ。しかし

身体活動度が下がると、座る時間と死亡率の関連性は強くなる。

という結果でした。

ちなみに「適度な身体活動」ってなんやねん、ということです。文献中では、この表現の他に、「1日8時間以上座るが、1週間に35.5メッツ以上の運動をした人は、死亡リスクの上昇を認めなかった」とも書いてありました。メッツとは運動の単位です。どれくらいの運動をすれば良いのか調べて計算しましたところ、

1週間のうち6日、40分間ウォーキング。

あるいは、

階段上り下りや軽いジョギングを週3回、20分間。

であれば、週36メッツになります。それくらいならできそうな感じしませんでしょうか。

なお、同じ分析を、単に座る時間ではなく「テレビを見る時間」でし直すと、運動によって死亡リスクは減るけれどもリスクを帳消しにするところまではいかなかった

とのことでした。テレビを座って見るのと仕事で座っているのはどれくらい違うのか不明ですが、、テレビを見ている時はかなりじっとしているのでしょうか。

いずれにせよ長時間座らねばならない時は、合間に足の運動、マッサージ、ちょっとした歩行などをする方が良さそうです。また、ちょっとした運動で座りっぱなしを帳消しにできるなら、高いスタンディングデスクを買う必要もないかもしれませんね。

 

Holly Kenkoアンチエイジングセンターはフェイスブックツイッターもしております。よろしければフォローをお願いいたします。

 

参考文献

1. Toru Shirakawa et al. Watchin television and risk of mortality from pulmonary embolism among Japanese men and women. Circulation July 26, 2016

2. Ulf Ekelund et al. Does phisical activity attenuate, or even eliminate, the detrimental association of sitting time with mortality? A harmonised meta-analysis of data from more than 1 million men and women. The Lancet 28 July 2016.