香りと脳のアンチエイジング / by Noriko Ikedastemo

脳のアンチエイジング part2」で、アルツハイマー病では記憶の場所「海馬」の萎縮がアンバランスに進む、と書きました。実はその有名な「海馬の萎縮」の前に、起こる変化があるようです。それは、「嗅神経」ー匂いを感じ取る神経、の機能低下です。まず嗅神経がやられて匂いがわからなくなり、その後に海馬の神経がやられて物忘れをきたす、ということに鳥取大学医学部浦上克哉教授は注目され、研究を続けてこられました。

それならば匂いの神経を刺激すれば嗅神経の機能低下を防ぎ、その後に起こる海馬の萎縮を予防できるのではないか。嗅神経を刺激すればその刺激は同じ大脳辺縁系の海馬にも伝わって活性化され、認知機能が改善するのではないか。その研究結果はテレビでも紹介され、番組終了後全国でアロマオイルが売り切れ続出になったそうです(数年前?)。私はその番組もその騒動も全く知りませんでしたが、昨年講習会で浦上先生の講義を聞いた時は、本当にワクワクしました。

アロマテラピーは代替医療の一つとして海外でも広く行われ、安全性も実績があります。浦上先生は様々なオイルを使って認知機能との関連を研究され、効果を認めたのはレモン、ローズマリー、ラベンダー、オレンジであったそうです。

レモンとローズマリーは交感神経を活性化し、記憶と集中力を高めてくれます。ちなみにレモンやレモングラス、グレープフルーツなどの柑橘系成分を嗅ぐと前頭葉野近傍部の活性化が認められるようです(参考文献2)。そしてラベンダーとオレンジオイルは副交感神経を活性化し、こころを落ち着かせます。(交感神経と副交感神経については「運動と血管のアンチエイジング part3」の付録部分をご覧ください。)

 

参考文献1では、アルツハイマー病17人を含む認知症の方28人、平均86.1歳を対象として研究が行われました。レモンとローズマリーのアロマオイルをディフューザーの中に入れて朝9時から11時の間部屋に置きます。また、夜7時半から9時の間には、ラベンダーとオレンジを同様にして部屋に置きました。

その結果

様々な種類の認知機能テストをした結果、アロマテラピーにて一部テストで改善が認められました。特に軽度から中等度のアルツハイマー病患者で認知機能の顕著な改善が認められました。その一部テスト以外でも統計学的な有意差はないものの、改善傾向を認めました。

この論文では人数も少ないので、さらに人数を増やしつつアロマテラピーの認知機能改善メカニズムや効果について実証をすすめているとのことでした。

ちなみに、アロマオイルはオーガニック栽培の原料でないと効果がないとのことです。テレビの反響で売れ行きが凄まじく化学合成したアロマオイルも出回ったそうで、それを危惧して先生の名前のついた商品を作られたそうです(サイトはこちら)。正直商品紹介だけ見たら、商売の話かいな!となるのですが、講義の中で浦上先生の認知症患者さんに対する対応の仕方や認知症への取り組みを学び、真摯に正しいものを広めたいんだなという思いが伝わりました。

 

神経細胞は再生しないと言われてきましたが、海馬の神経形成は様々な環境因子にコントロールされながら一生を通して続くことがわかってきました。アロマテラピーという生活に簡単に取り入れられる代替医療。試してみる価値はありそうです。

 

Holly Kenkoアンチエイジングセンターはフェイスブックツイッターもしております。よろしければフォローをお願いいたします。

 

参考文献

1. Jimbo et al. Effect of aromatherapy on patients with Alzheimer's disease. Psychogeriatrics 2009; 9;173-179

2. アンチエイジング医学の基礎と臨床 改定3版 p.321-322