歯のアンチエイジング〜虫歯菌と認知症、脳出血のリスク?〜 / by Noriko Ikedastemo

口の中の細菌が血管に入り込んで、心臓や脳の病気を引き起こすのではないか、ということは以前から言われていました。歯周病菌が心臓の詰まった血管の中にいたり(歯のアンチエイジング〜歯周炎と心筋梗塞のリスク?〜)、動脈硬化のプラーク(血管の中にできるコブのような部分)の中に虫歯菌がいたり、という報告などがあります。

 

今回は、虫歯菌と認知症、脳出血のリスクについての報告を紹介します。

「ラクナ梗塞」「微小出血」「白質病変」。これらはすべて脳の「小さな」血管が詰まったり、出血したり、血の循環が悪くなったりしたものです。症状がないことも多く、人間ドックなどでたまたま見つかったりします。しかしこの小さな病変でも、数が多くなってくると認知症の原因となります。

血管の老化をすすめることで有名な高血圧や糖尿病。ただしラクナ梗塞や微小出血などを引き起こす脳の「小さな」血管に関しては、ある程度の影響は与えるものの、その病因は実はあまりよく分かっていなようです(参考文献1)。

その原因がよくわからない病気の一つである「微小出血」。この病気が、あるタイプの虫歯菌と関連があるという報告がありました(参考文献 2)。

 

参考文献2では、脳卒中(脳出血や脳梗塞)で入院した50人の唾液を採取、「コラーゲンとくっつくタイプの虫歯菌(長いので、以後cnm虫歯菌とします)」を調べ、それぞれの病状とともに解析しました。その結果

cnm虫歯菌が口の中から検出された人は、そうでない人と比べて、脳のMRIで明らかにたくさんの「微小出血」を認めました。同じcnm虫歯菌でも、コラーゲンとくっつく強さは違うらしいのですが、コラーゲンとくっつく力が強いcnm虫歯菌がいる人ほど、脳の微小出血の数も多いことがわかりました。

また、cnm虫歯菌がいる人では、そうでない人と比べて、脳出血(大きな血管からの出血)を発症している割合が明らかに高かったことがわかりました。

 

これらの結果を踏まえて、著者らは以下のようなメカニズムでcnm虫歯菌が微小出血や脳出血と関連しているのではないかと述べています。

cnm虫歯菌が血管の中に入る → 脳にたどりつき、脳の小さな血管の中で炎症を起こしてダメージを与える → 小さな出血(微小出血)を引き起こす。

動脈硬化などで血管が裂けて出血した時、cnm虫歯菌は「血小板」の仕事を邪魔することで血を止まりにくくし、大きな出血(脳出血)に至る。(動脈硬化などで血管が裂けて出血した時に、血の中にある「血小板」が集まって出血を止めます。)

 

脳も心臓も、命と直結する大事な臓器です。口の中を清潔に保つこととで、それらの病気のリスクを減らすことができるかもしれません。ご飯の後ソファで横になって眠くなっても、ベッドに直行せず頑張って歯を磨きましょう!

 

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参考文献

1. J.M.Wardlaw et al. Vascular risk factors, large-artery atheroma, and brain white matter hyperintensities. American Academiy of Neurology; 2014: 1331-1338

2. S.Tonomura et al. Intracerebral hemorrhage and deep microbleeds associated with cnm-positive Streptococcus mutans; a hospital cohort study. Scientific Reports. 6:20074. 05 February 2016.