筋肉のアンチエイジング / by Noriko Ikedastemo

みなさんこんにちは。今回のテーマはこちらです。

「サルコペニア」とは?

筋肉はいくつになっても鍛えることができる。

 

前回の骨粗しょう症に引き続き、骨折・転倒を引きおこし、寝たきりや介護が必要となる状態になってしまう大きな原因のひとつ、「サルコペニア」が今回のテーマです。

 

「サルコペニア」とは?

「サルコペニア」とは、加齢に伴い筋力、筋肉量が低下した状態のことです。European Working on Sarcopenia in Older People (EWGSOP)では、『筋肉量と筋力が進行性、全身性に進行し身体活動障害をもたらす症候群』と定義されました。

アジア地域でのサルコペニアを定義するため開かれたAsian Working Group for Sarcopenia (AWGS)では以下のようなアルゴリズムで診断しましょうという結果になりました。なお、下図にある「握力の低下」は男性26kg、女性18kg未満、「歩行速度の低下」は0.8m/秒以下となっています。(参考文献1)

 
                                            参考文献1より引用作成

                                            参考文献1より引用作成

 

では、筋肉量、筋力の低下は、どのようにして起こるのでしょうか。

筋肉は運動神経とその神経支配を受ける筋線維から成り立っています。この収縮調節の最終単位が「運動単位」であり、その中のあらゆる部分が加齢による変化をきたし、筋肉量と筋力の低下を引き起こす原因となっています。

 

筋力が低下することで身体活動・機能も低下、脆弱性も増悪し、生活の質や日常生活に大きな影響を及ぼします。サルコペニアは日本では医療保険が使える病気でもなく、標準の治療もありません。しかし科学的根拠に基づく予防対策は報告されています。

 

筋肉はいくつになっても鍛えることができる。

 

サルコペニアの予防や状態の改善については、栄養介入、運動介入による効果が多く報告されています。

そのうちのひとつ(参考文献2) を紹介します。

アメリカで、療養施設に住む平均87歳の虚弱な高齢者100名を対象に、運動グループ(筋力トレーニング)、運動と栄養サプリメント摂取グループ、栄養サプリメント内服のみのグループ、コントロールグループ(偽の栄養サプリメント内服か、軽いウォーキング程度の運動)の4つに分けて、10週間後再度筋力テストや筋肉量の測定が行われました。結果はこちらです。

                                        参考文献2より引用作成

                                        参考文献2より引用作成

運動グループでは筋肉量、筋力、歩行速度全てにおいて改善を認めました。運動とともに栄養サプリメント摂取グループではさらにその効果が認められました。なお、サプリメント内服のみのグループでは効果は認めませんでした。

日本でもサルコペニアと判定された高齢者女性を対象として同様の試験が行われ、運動+栄養グループで有意に筋力の改善を認めています(参考文献3)

虚弱高齢者に対する筋力トレーニングと栄養サプリメントの効果は、筋肉の生検でも筋線維領域の増加として証明されています。(参考文献4)

動物実験でも、加齢により変化した神経筋接合部の形態が、運動によって若い頃の状態へ逆行的に変化するとの報告もあるようです(参考文献5)

 

いくつからでも筋肉を鍛えることはできます。少しずつ、実践しましょう!!

注意!! 「過度の」筋力トレーニングは動脈硬化を増悪させるという報告も多々あります。また、急な負荷は心臓にもかなりの負担となります。これまで運動をしていない方や虚弱な方は無理をせず、トレーナーと相談しながら開始することをお勧めします。

 

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参考文献

1) ロコモティブシンドロームのすべて 日本医師会雑誌 第144巻特別号(1) P182-196

2) Maria A et al : Exercise training and nutritional supplementation for physical frailty in very elderly people. The New England Journal of Medecine 1994; volume30 Number25; 1769-1775

3) Kim H et al : Effects of exercise and amino-acid supplementation on body composition and physical function in community-dwelling elderly Japanese sarcopenic women : A randomized controlled trial. J Am Geriat Soc 2012; 60: 16-23

4) Maria A et al : Insulin-like growth factor I in skeltal muscle after weight-lifting exercise in frail elders. American Physiological Society 1999; E135-E143 

5) Valdez G et al : Attenuation of age-related changes in mouse neuromuscular synapses by caloric restriction and exercise. Proc Natl Acad Sci USA 2010; 107; 14863-14868